おわりに
時間管理とは、自分が設定した目標達成のためにある。目的が明確でなければ、何のために時間管理を行うのかわからなくなってしまう。目的と手段が入れ替わり、時間管理を行うことが目的とならないよう、気をつけよう。
これまでにも述べたが、時間管理をうまく行うには、「危機管理」という発想を持たねばならない。
危機には crisis と risk がある。何かが起こってから対応するのが crisis management。例えば、大災害が発生したときの対応。それに対し、もしこういうことが起きたらどうする?という発想で考えるのが risk management。例えば、もしこの地域で大震災が起きたらどういう対応を取るべきかを(あらかじめ)考えておくこと。
臨床の世界は、リスクマネジメントで決まる!と言っても過言ではない。患者の現在の容体から考え得る経過や予後、予測されうる病状変化の際に取るべき対応、検査予測とそのときの対応、患者や家族への説明など、そのすべてがリスクマネジメントだ。それが上手な人は、先を読み、事が起こる前に火種を消して歩いているので、落ち着いた状態が続く。もちろん、臨床医はCPA等の救急時のクライシスマネジメントにも対応できなければならないのは当然だが。
リスクマネジメントはクライシスマネジメントと違い、その姿は外からは見えない。見えないからその力を軽視しがちだが、リスクマネジメントがうまくいっていると患者も家族も、そして、それを看守るナースやコメディカルも、落ち着いているものだ。リスクマネジメントの良し悪しは、実は、臨床医(やその病院)の力量を反映している、と言ったら言い過ぎだろうか。そのリスクマネジメントの良し悪しは、時間管理の良し悪しであるようにも思える。
時間管理がうまくいかないと嘆いている人は、是非、日常の診療の中で先読みをするトレーニングを積もう。わざわざ高額なセミナーに行く必要もない。日常の中にトレーニングの場があるのだから幸せだ。
そう、幸せ。幸せになるために、私たちは時間管理を行うのだ。目標が達成できれば幸せのはず、そうでなければ、その目標を見直す必要がある。
幸せへの鍵はリスクマネジメント。時間管理とはリスクマネジメントのことだったのだ! それを身につけることが、患者やその家族の幸せ、自分の友人や周囲の人々(同僚)の幸せ、自分の家族の幸せ、そして、自分の幸せにもつながる。
時間を上手に使って、そのような幸せをつくってみようではありませんか。
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