研修制度の見直されるようで、その骨子はすでにマスコミ等で報道されています。
私は、個人的には見直し自体には反対ではありません。
どのようなシステムであれ、導入後にあぶり出された問題点や時代にそぐわなくなったところを見直すことは必要だと思います。
しかしながら、今回の制度の見直しは、あまりにも性急、かつ、稚拙です。
と個人的にいろいろと批判してきましたが、「批判ばかりせず、改善の対案を出せ」と研修医にも言っている手前、私の対案を出してみたいと思います。
現行制度は、
内科、外科、救急(麻酔科を含む)、小児科、産婦人科、精神科、地域保健・医療が必修科目。
臨床研修制度 見直し最終案骨子
▽「医師としての人格の涵養、基本的な診療能力の修得」の理念の下、研修医のキャリアパスに応じて各病院の特色、工夫が生かせるよう、プログラムを「弾力化」する
▽学部教育の改革や専門医制度検討の動向などを踏まえ、卒前・卒後で一貫した医師養成を目指し、臨床研修の質の向上を図る
▽従来、大学が担ってきた地域への医師派遣機能を再構築し、地域に必要な医師確保の観点から、研修医の募集定員や研修病院の指定基準を見直す―
研修1年目は、内科(6か月以上)と小児救急を含む救急(3か月以上)を必修とし、プライマリー・ケアの習得を目指す。外科や麻酔科、産婦人科など、他の診療科については選択制とし、各病院の判断で、個々のキャリアパスに応じた研修を早期に実施する。
2年目には、地域の第一線の病院、診療所で研修を行う「地域医療研修」(1か月以上)を必修とする。小児科や産婦人科など、医師不足が著しい診療科については、一定規模以上の病院に対し、将来これら診療科を担う研修医を対象としたプログラムの作成を課している。
(CBニュース、2009年2月2日)
・1年目の必修は内科と救急のみ。各病院の判断で早い段階から将来のキャリアに向けた研修を実現
・2年目の必修は地域の第一線の病院・診療所における地域医療のみ
・現行の多くの診療科を巡回する研修も各病院の判断で引き続き実施可能
・研修医の適正配分のため、人口や地理的条件を考慮し、都道府県ごとに募集定員の上限を設定
(読売新聞、2009年2月3日)
案によると、国が必修とする診療科は現行の7科・部門から、内科(6カ月以上)と救急(3カ月以上)、地域医療(1カ月以上)の3科・部門に絞る。その上で、外科、麻酔科、小児科、産婦人科、精神科の5診療科の中から、1~2科を選んで研修することを必須とする。
また、医師の地域偏在を解消するため、都道府県別に研修医の定員に上限を設ける考えも示された。
(朝日新聞、2009年2月2日)
5年間、この臨床研修制度に関わってきた者として、見直しの骨子も念頭に置きながら、下記の提案と提言を行います。
【私案】
「医師としての人格の涵養、基本的な診療能力の修得」するために、
1年目
内科6ヶ月、外科3ヶ月、救急(麻酔科を含む)3ヶ月
2年目
小児科2ヶ月、地域医療(病院・診療所)1ヶ月、残りは選択期間
選択期間:自らの将来に役立つ診療科を選択研修すること。
の研修を行う。
CBT/OSCEをパスした医学生に「臨床研修生」の称号(パスポート)を与え、医療チームの一人として参加してもらい、指導医の監督下での臨床実習における基本的手技(採血など)に携わることを認める(要医療法改正?)。
(理想案:指導医は、研修医や学生の臨床教育に積極的に参画することを義務づける。研修医や実習学生を受け入れる病院は、指導医の外来や受け持ち入院患者の軽減するよう、指導医の負担軽減に努めなければならない。・・・指導医負担を削減した分を指導医以外の医師が補わなければならなくなるため、現時点では無理な案かもしれません。)
【提言】
新臨床研修制度が始まって以来、学生が大学病院を有望な初期臨床研修先としては認識しなくなってしまいました。
初期臨床研修の主旨から考えると、それはあながち間違いではありません。
しかし、本来は、やはり大学病院に人が集まるべきだと思うのです。
なぜなら、大学病院こそが「教育者」「指導医」の集まりであるはずですから。
(アメリカではいい大学病院で研修することが一種の status です)
大学病院に研修医が集まらないのはなぜなのでしょうか。
今こそ、大学の指導者たちはその理由を真剣に考えてみる必要があります。
「箱」を開けてみたら、箱の外には中以上にいい指導医といいシステムがあった。
そのことに学生が気付いてしまったのです。パンドラの箱は開いてしまったのです。
どのように箱だけを変えたとしても、中味が変わらなければ同じなのです。
今やるべきことは、教育体制の見直し。そして、大学医学部自体の見直しです。
すべての大学医学部が東京大学、京都大学、慶応大学などの有名大学の医学部と同じことをやってもしょうがありません。
特に、地方大学にはその大学でしかやり得ない特色のあるプログラムが組めるはず。
初期臨床研修に限れば、common diseases や救急の経験症例数が少ないはずですから、地域の管理型研修病院と十分な連携を組んで、「入局を前提としない」研修医の往来を創り上げていかねばなりません。
入局を前提としない。
それは医局制度に支えられてきた大学病院にとっては受け入れられないことかもしれません。
しかし、もはや、そのことに固執していては、若い研修医たちは戻ってきません。
研修医の往来を促し、大学病院に多くの若者が出入りするシステムを構築することを優先すべきです。
そのための一つの提案が、地域の管理型研修病院との「緩やかな連合体」です。
研修医の志向は、医学博士から臨床医へと移ってきています。
通常、どこの国においても、医学部卒業生の8~9割が臨床医を目指すはずです。
そして、国民が望むのは、その8割は自分たちの病気の治療に当たってくれる優秀な臨床医のはずです。
そのために、今、医学部は何をしなければならないのかを問わねばなりません。
医学部教育体制の再構築を図る必要があるのです。
今のままでは、医学部に入ってから卒業までどのように過ごすのか、イメージすることができません。
ましてや、初期臨床研修、後期研修、専門研修、そして一人前の医師としての自分のイメージを創ることなんて無理な話。
私は基礎研究を蔑ろにするつもりはありません。
基礎研究を望む人は少なからず存在するはずです。それは大切にすべきです。
将来の日本の基礎研究を担う大切な大切な人たちなのですから。
それと同じように、臨床医を目指す多くの学生も大切にすべきなのです。
日本の医療を底辺から支えていく貴重な人材なのです。
良い研究者を創り出すこと。
良い臨床医を創り出すこと。
そのために、大学医学部・大学病院は何をすべきなのか。
そして、その周囲を取り囲む管理型研修病院は何をすべきなのか。
そのことをみんなで真剣に考えるときが来ているのです。
自分のところ(医局や病院)がよければそれでよい、という時代は終わりを告げているのです。
そのことに気付いている指導者の少なさが新たな悲劇を生み出しつつある、という私の心配が杞憂に終わることを念じつつ。
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大学に求められている物、足りない物を関係者が認識することがなにより必要だと思います。昔は(今も?)人材派遣が大学には求められていたのでしょう。しかし研修医が大学に戻らない今、派遣したくても人がいない現状では人材派遣を続けるのは難しいでしょう。また同時に人事で周辺病院や医局内部を仕切る(という表現は適切ではないかもしれませんがほかに表現が思い当たりません)というのが時代遅れになってきているのだと思います。今大学に求められるものは、尖ったもの、つまりうちじゃないとできない物で、それを作り上げられるかが今後大学が復活できるかの鍵だと思います。現に大学が一色単に不人気ではなく魅力を持っている大学医局には入局者はたくさんいますからね。
あと個人的な意見としては発想を転換して人を派遣するのではなく『頭脳』を派遣することを考えてもいいのかなと思います。若い先生方がその頭脳に触れてもらい大学の存在や魅力をを知ってもらうこともできますし。離島など厳しいところもあるでしょうが、そこは大学だけで処理しようとするから無理が出るのであって、ご指摘されているように入局を前提としない緩やかな連合体というシステムを作れればその中で解決できる道が生まれてくるのかなと思います。
不況真っ最中の経済の中の企業と同様に、不人気真っ最中の大学も目先のことにとらわれず、5年後、10年後のことを考えて手を打っておけるかが今後大学が復活できるかどうかの分かれ道だと個人的には思います。今の若い先生方が専門分野をやりたいときに選ばれる大学になるためにも・・・。