昨日掲載した問題1の回答と解説です。解説については講演の資料ではなく私がまとめた分となります。どなたかフォローしていただければ幸いです。余り時間がとれないので1日1問とさせてください(^^;
問題1 尿からVancomycin(VCM)、Ampicillin(ABPC)耐性のEnterococcus faeciumを10^7検出。以下の薬剤感受性はすべてSensitive。もっとも臨床効果が期待できる抗菌薬は?
1:Ceftriaxone(CTRX)
2:Linezolid
3:Clindamycin(CLDM)
Enterococcus faeciumやEnterococcus faecalisなどのEnterococcusはセファロスポリン系抗菌薬に対して自然耐性です。(第5世代のセフェム系といわれるCeftobiproleやceftarolineなどの新しいセファロスポリン系はある程度効果があるかもしれないとされています:まんでるより)そのため感受性結果でSとなっていても臨床効果は期待できません。
CLDMもEnterococcus感染症に対しては臨床効果は期待できません。(Enterococcus spp., H. influenzae, and N. meningitidis, clindamycin is generally inactive against these organisms at clinically achievable concentrations:まんでるより)
ということで正解は2番のLinezolidとなります。ちなみに問題1のEnterococcusはVCMにも耐性ということでVREとなりますね。ただ米国等ではLinezolidの使用量が増加するにつれ、Linezolid耐性のEnterococcusも増加しているとの報告もあり注意が必要です。何事もほどほどに、でしょうか。
Increasing Incidence of Linezolid-Intermediate or -Resistant, Vancomycin-Resistant Enterococcus faecium Strains Parallels Increasing Linezolid Consumption Antimicrob Agents Chemother. 2008 Jun;52(6):2256-9. Epub 2008 Apr 7.
以下は青木先生の「レジデントのための感染症診療マニュアル」から腸球菌感染の部分を簡単にまとめてみたものです。
腸球菌感染症
レジデントのための感染症診療マニュアルより
他のD群連鎖球菌(S. bovis)と比べて6.5%Nacl、pH9.6、温度10-45℃などの厳しい環境でも生存可能。
抗菌薬に耐性傾向を示す。
院内感染症の原因菌として第2-3位を占める。
腸管に常在するが、皮膚やその他一般環境にも常在可能→SSIやカテ感染なども起こし得る。
腸球菌自体による死亡率はは30%という報告有り。
毒素は産生しないが心内膜や腎臓の上皮細胞に付着し感染を起こすことができる。
尿路感染が最も多い。他には菌血症(カテ感染など)、心内膜炎、腹腔内感染がつづく。
たまに髄膜炎も?
●臨床像
尿路感染:一般的に起こるが、複雑性尿路感染症、院内感染でより多くみられる。
血流感染症:尿路感染症>腹腔内感染症>骨盤内感染症>熱傷>褥瘡>カテーテル・胆管炎 で多い カテ感染でも起こるのを忘れずに。
IE:自然弁・人工弁の細菌性心内膜炎の約10-20%でみられる
腹腔内感染:時々検出されるがどこまで病態に関与しているかは不明。(効かない抗菌薬を使用していても治癒することが多い)
髄膜炎:まれだがある
●治療
基本的にはPCG or ABPC+GM
心内膜炎、髄膜炎、重症敗血症の場合はGM併用は必須。尿路感染などは単独でも可能か。
治療期間は尿路感染症・菌血症は10-14日、IEは4-6週、髄膜炎は2-3週
●耐性
元々耐性が強め。ペニシリン系でも静菌的にしか作用しない。
ペニシリンが耐性と、アミノグリコシド系薬剤が耐性の2パターンで考える。
☆ペニシリン耐性(MIC≧16)
→β-ラクタマーゼ産生:日本ではまれ。β-ラクタマーゼ阻害薬配合剤(ABPC/SBT等)使用
→内因性耐性:各種Enterococcusでみられる。PBP5の低い親和性が原因。最近はさらに耐性化が進んでおり、PBP5の親和性低下が原因といわれる。VCM使用する。
☆バンコマイシン耐性(VRE)
ペニシリンに感受性あればいいが、ほとんどが耐性。VREのほとんどがE. faecium。VanA(VCM×TEIC×)、VanB(VCM×TEIC△)、VanC(VCM×TEIC○)などの遺伝子がある。
キヌプリスチン・ダルホプリスチン(シナシッド)はE. faeciumには有効。E. faecalisには無効。
リネゾリドは各種Enterococcusに有効。これら2つも静菌作用のみ。
☆アミノグリコシド耐性
単剤では使用しない。細胞壁破壊に働くβラクタム系薬剤と併用で。高度耐性の場合は併用は無効。
耐性機序は、標的のリボゾームの変異かアミノグリコシド修飾酵素による。
ゲンタマイシンに高度の耐性を与える、もっともよく見られる酵素(6′アセチルトランスフェラーゼや2′-ホスホトランスフェラーゼ)は他のアミノグリコシドにも耐性を与えるが唯一の例外はストレプトマイシン。
上記酵素に加えてストレプトマイシンに耐性を与える酵素(6-アデニルトランスフェラーゼ)を産生する株は唯一残ったストレプトマイシンも破壊するので、全てのアミノグリコシド系薬剤が使用できなくなる。
その場合は長期間のペニシリン系薬剤使用となるが治療成績は落ちる。
全てのE. faeciumはトブラマイシン、カナマイシン、ネチルマイシン、シソマイシンを不活化する6′アセチルトランスフェラーゼを持っており使用すべきではない。
結局使えるのはゲンタマイシンかストレプトマイシンのみ。
ゲンタマイシン感受性:1-1.5mg/kgを8時間毎(1回投与はしない)
ゲンタマイシン高度耐性(MIC>500μg/ml):ストレプトマイシン感受性があるなら(MIC<1000μg/ml)ストレプトマイシンを7.5mg/kgを12時間毎に筋注or静注
ゲンタマイシン・ストレプトマイシン両方に耐性:ペニシリン系薬剤単剤となる。
髄膜炎ではリファンピシン併用も可能??

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